co-lab主宰 田中陽明さんに聞く~クリエイターとモノ作りの現在について

インタビュー 2012.10.29
co-lab主宰 田中陽明さんに聞く~クリエイターとモノ作りの現在について クリエイターたちのシェアードオフィスとして都内に4箇所の拠点をもつco-lab(コーラボ)。そのco-labを立ち上げ、クリエイター、企業、自治体などのコラボレーションを促進してきた田中陽明さんに、クリエイターとモノ作りを取り巻く現在の環境と、co-labのこれからについて話をうかがいました。

co-labって何?

「個人で働く」と「企業で働く」の中間領域「コラボレーションして働く」という第3の働き方を実現させるシェアードオフィスとして誕生したのが co-lab(コーラボ)です。 現在、都内4箇所の拠点には多くのクリエイターが入居し、上下のしがらみのないフラットな関係性の中で、日々、新たなコラボレーションが生まれています。co-labが関わったプロジェクトは、商品開発から街づくりまで多岐に渡ります。 そして4箇所の拠点で一番新しい渋谷アトリエは、3Dプリンター、レーザーカッター、大型プリンターや電子ミシンなど、最新のデジタルファブリケーション・ツールを揃え、モノ作りに重点を置いている。まさにメイカーズのシェアードオフィスとなっているのです。
co-labを設立したきっかけを教えて下さい。
 もともと美大で建築を学んでいました。美大にはアート系の人間とデザイン系の人間がいるんです。その双方が垣根なく交流できる。そんな大学の環境が好きでした。
 卒業後、大手ゼネコンで働いたのですが、やはり企業の体質はクリエイションには向かないと感じました。トップダウンやしがらみなどが多くて自由度が低いなと。
 その後、いろいろあって、立ち上がったばかりの慶應SFCの政策メディア研究科の研究室に入学したんですが、美大時代同様のフラットな関係でなんでも話し合える研究室の環境に身を置き、社会にもこういう場所が必要だと感じたのがco-labを立ち上げたきっかけです。もともと美大だったのでクリエイターを集めて始めたのが10年ほど前ですね。アート系の人間、デザイン系の人間、そして企業が出会い、コラボレーションできたらおもしろいじゃないですか。
 日本では大きく分けて「企業で働く」か「個人で働く」という選択肢しかないですよね。特に最近は、終身雇用の崩壊やネット環境の普及などで、個人で働くという人は増えてきたと思うんです。ただ、個人ではできることに限界がある。そこで個人同士や個人と企業が「コラボレーションして集合体で働く」という第3の働き方を作り出したいと思って、そういう場作りを心がけてます。
 アーティストはアートで問題提起をしていく立場です。デザイナーは、その提起された問題に対し、デザインという形で回答をする、企業はビジネスポリシーによってその問題を解決していく。そんな3者の理想的な関係が生まれる場をco-labは目指しています。

co-lab渋谷アトリエ

co-lab渋谷アトリエは、co-labさんの拠点の中でも、レーザーカッターや3Dプリンターなど、デジタルファブリケーション・ツールの揃ったモノ作りオフィスという感じがしますが、どんな意図でそうされたのでしょうか。
 それほど強い意図みたいなものがあったわけではないんです。ただ僕の仕事は場作りなんで、機材がたくさんある場なら何か生まれるかなと思って。だからモノ作りの人たちばかりが集まってるわけでもないんです。でも見ていると、機材が身近にあってすぐ試作品が作れるっていうのは大きいですね。アイディアがあったらすぐプロトタイピングできる。これはすごく大事なことなんです。建築でも模型作らないと見えてこないものってありますが、それがすぐに形にできるというのはすごく思考そのものが変わるんですよね。

co-lab代表・田中陽明さん

今、世界的に「メイカーズムーブメント」が盛り上がりを見せる兆しがあります。クリス・アンダーソンの『MAKERS』もその流れの中で書かれた本だと思いますが、日本についてはどう思われますか。
 アメリカはもともとDIY精神が息づいている国というイメージがありますね。テックショップ(会員になると自由に使えるレーザープリンターや3Dプリンターの揃った作業スペース)が普及しているのも、もともとDIY精神が根付いていて、自分のものを自分で作るのが当たり前だからだと思います。その流れの中で、今のメイカーズムーブメントがあるのではないでしょうか。ヨーロッパでも、職人やモノ作りをする人は職業的にも尊敬されています。たぶん日本も同じようなモノ作りの土壌があったはずなんですが、どこかでそれを忘れてきてしまっている。どこか手作業やモノ作りが低く見られてきたように思います。リスペクトが足りないというか、DIYや手作業は所得の低い人みたいなイメージにされてきたというか。
 日本でもモノを作り出す人、つまりクリエイターの地位をあげていきたいし、今がその転換期だと感じます。

たしかに、高度経済成長期やバブルの時代に職人の技術などが軽視されてきたのかもしれませんね。
 職人の中には、素晴らしい技術を持っている人がたくさんいます。町工場などもそうです。しかしその特殊技術が押し出せていない。そこにデザイナーやアートの人間が結びつくことで新たなものが生み出せるのではないか、というのもco-labで取り組んでいることの一つです。畳の需要が減って、畳職人もイグサの栽培もなくなる寸前まで減少しています。そこでco-labのメンバーで「TATAMO! これからの畳をつくるプロジェクト」というプロジェクトに取り組みました。廃棄処分され続けてきた短いイグサを利用し新たな畳を生み出すプロジェクトです。すでに販売も開始されていて評判も上々です。

OKI TATAMO! 1.0畳

クリス・アンダーソンの『Makers』も発売になりました。我々もサイトでも盛りあげていこうと考えているこの「メイカームーブメント」に期待することはありますか。
 今、世の中のモノが適正価格を保てていないと感じています。製造業がいじめられて、絞るだけ絞られて、安い製品を作る。ほんとは3000円で椅子なんて無理なんですよ。そして無理やり安く作った椅子はどこかに無理があるから、価値が低くなる。愛着を持てないからすぐ捨てられてしまう。自分で作るということをはじめるとモノに対する意識が変わるんじゃないですかね。材料を選ぶところから始めると、いろいろなことが見えてきます。それと、大量生産、大量消費のサイクルに対して、メイカームーブメントでは、少量生産が可能になると思います。そうすると、モノの価値が変わってくるのではないでしょうか。

そうですね。我々もメイカームーブメントを盛り上げ、モノ作りの価値、意識を改革していく力になれるようにがんばります!今日はありがとうございました。




(取材後記)
クリス・アンダーソン『Makers』には、インターネットの普及によって、アイディアがみんなで共有できるようになり、意見を出しあい議論できることで、製品を改善したり新たなアイディアを付け加えることが容易になったと書かれています。 しかし、今回co-labにお邪魔して感じたのは、ネット上よりも物理的に場を共有すると、さらにコラボレーションしやすくなるのだということです。そのためには、田中さんがいうように、企業とは違う、フラットな関係の場が必要だということも感じました。co-lab渋谷アトリエは、まるで大学の学生会館のような、フリーな場所でした。各自が自分の作業に集中しながらも、ときどき言葉をかわしたり談笑している姿に、企業でも個人でもない第3の働き方を感じました。co-labはインターネット的なフラットな関係の物理的版ともいうべき21世紀の職場といえます。

TEXT BY KOHEI YAMAMOTO

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