キャンプファイヤー石田さんに聞く! 「クラウドファンディングと付き合う法」【前編】

インタビュー 2012.11.07
 メイカーたちは、どうやってお金を集めるのか。もの作りをしていくにはやはり、それなりの資金が必要になる。大企業に属さないメイカーたちにとって、資金調達は大きな課題だろう。
 そんな中、注目を集めているのが、クラウドファンディングという資金調達プラットフォームだ。クラウドファンディングとは、メイカーやクリエイターがプロダクトや作品を制作するために、インターネット上で、不特定多数の人々から、比較的小額の資金提供を受ける仕組みのことだ。アメリカではキックスターターというクラウドファンディングを通して、数億もの資金調達を行い、ビッグプロジェクトを成し遂げているメイカーもいる。
 われわれ、日本のメイカーたちはクラウドファンディングと、どう付き合っていけば良いのか!? 日本におけるクラウドファンディングの雄、キャンプファイヤーの石田さんに聞いてきたゼ!! 前編では、アメリカのクラウドファンディングと比較しつつ、キャンプファイヤーがどのような場なのか質問したゼ!!

石田光平(イシダコウヘイ)

東京都出身。農力村を立ち上げ後、2011年家入一真とともにインターネット大好き企業の株式会社ハイパーインターネッツを設立。代表取締役に就任。クラウドファンディング・プラットフォーム “CAMPFIRE(キャンプファイヤー)”を立案・運営。
・WEBサイト:http://camp-fire.jp/
・Twitter:@kohex
・Facebook:http://www.facebook.com/koheiishida

【キャンプファイヤーとは!?】
CAMPFIRE(キャンプファイヤー)とはアーティスト・映画監督・ミュージシャン・作家・スポーツ選手・プロダクトデザイナー・ジャーナリストといったクリエイターのためのクラウドファンディング・プラットフォーム。日本のクラウドファンディングとしては先駆的な存在であり、その動向は要チェックだ!! キャンプファイヤーのサイトはこちらから。

                       キャンプファイヤー代表取締役・石田光平氏

キックスターターに代表されるように、クラウドファンディングはもともとアメリカで始まったものです。キャンプファイヤーを実践されてきて、日本とアメリカのカルチャーの違いを意識されることはありますか。
 それはかなりありますね。アメリカには個人が企業にお金を払う文化が根付いているんです。エンジェル投資家に代表されるように、それこそ数億単位でスタートアップへの投資がなされています。やはり、アメリカと日本の投資文化の土壌は全然違うと思いますね。
キャンプファイヤーを立ち上げるとき、どのように日本にローカライズしようと思いましたか。
 僕らがキャンプファイヤーを立ち上げるとき、キックスターターで一番大きなプロジェクトは「iPod nano腕時計」でした。13,510人から総計94万ドル(約8,000万円)を集めたものです。それ以降も、キックスターターでは、ガジェットに関する大きな案件が決まっていき、ビジネススケールを大きくしていきました。

 キックスターターの成功を横目で見ておりましたが、日本だとガジェットは受け入れられにくいのではないか、と当時は感じていました。日本はどちらかというと漫画やアニメ、アートといったオリジナルカルチャーが強いし、市場もあります。僕らがそういう分野が得意だったということも大きいですが、初めはカルチャーやアートの領域から始めようと思いました。
初めはあまり、プロダクトに取り組んでいらっしゃらなかったんですね。
 そうですね。日本とアメリカではプロダクトについての考え方が全く異なるので、キックスターターのやり方を真似しても、難しいのではないかと思いました。
 あるものづくりイベントを見に行って感じたんですが、日本の電子工作系プロダクトって、“むき出し”じゃないですか。基盤がそのまま出ていたり、機能が重視されすぎていたり。一般の人が使いたいと思う領域まで、踏み込めていないものが多いんです。かっこ良さやおしゃれを追究していくプロダクトデザインの考え方があまりないんだと思うんですよね。
 逆にキックスターターを見ていると、プロダクトデザインはめちゃくちゃかっこいいけど、「サイズとか、接続が合わないよ」みたいなことがよくあるんです。
 どっちが良い、悪いということではないんですけど、文化が全く違うので、別の方法を模索しようと考えました。
日本でクラウドファンディングというと、クリエイターの応援や寄付というイメージが強いと思います。アメリカでも同様でしょうか。
 アメリカには寄付文化が深く根付いていて、子どもたちは小さいころからさまざまな支援に関わっていきます。毎月のやりくりの中でそれなりの金額が割かれていますし、非常に体系化されたものなんです。
 彼らの感覚からすると、クラウドファンディングは、そうした寄付とは別物なんですね。もちろん作り手を応援する気持ちもあるでしょうが、モノが欲しいとか、使ってみたいといった現実的な視点が先にあります。自分の気に入ったプロダクトを流通させるために、資金を提供しているという感覚があると思うんです。ですから、かなりシビアにプロジェクトを選んでいると思います。

 その点でいうと、日本のクラウドファンディングは、アメリカのシビアな資金調達という考えからは、離れてしまっているような気がします。資金調達よりも、応援や寄付として捉えられてしまっているケースが多いですよね。国内の他社サービスをみてみても、“夢”とか“チャレンジ”というようなキャッチフレーズを掲げたものが多いです。
 日本でクラウドファンディングが出てきたときが、たまたま東日本大震災以降の応援や寄付にお金を使うという意識が芽生えてきたタイミングと重なっていました。ですので、寄付の延長線上でクラウドファンディングを理解しているパトロンの方が非常に多いですし、プレイヤーの皆さんにも多いかなと感じています。

 日本では、クラウドファンディングにお金が集まってくることで、世の中のもの作りの構造が変わるとか、人のお金の使い方が変わるかもしれないというような感覚は、まだ生まれていません。寄付や応援であれば、他にもっとふさわしいサービスがあると思うので、キャンプファイヤーとしては、もっとプロダクトアウト、つまり何かアイデアをかたちにする方向へ走っていきたいんです。
 いまだと、新しいプロダクトが出るとユーザーとして「あっ、すごい!」という印象しかないわけです。ただ、クラウドファンディングで億とかの単位でお金が集まるようになれば、「じゃあ、すごいものを自分で作ってみよう!」というように、なるわけじゃないですか。そうした何か「新しい価値」を生み出す場にしていきたいんです。

 最近でも「IMPOSSIBLE INSTANT LAB」という、iPhoneで撮影した画像をポラロイドフィルムに現像するガジェットが、キャンプファイヤー史上最大規模の支援金を集めました。こうしたケースを増やしていきたいですね。
なぜ現在、キャンプファイヤーはプロダクトを推しているのでしょうか。
 いま、魅力的なもの作りを行っている中小企業が増えています。僕らもお仕事を一緒にさせていただいているCEREVOさん、ほかにもBsizeさんといった、勢いのある小さな会社が、いくつかあります。小さなチームにも技術があって、魅力的なもの作りが出来るんですよ。
 日本の大手メーカーがぐらついているいま、小さなグループに可能性があると感じています。こうした動きを支援していきたいという気持ちがありますね。
キャンプファイヤーという場作りにあたって、留意されていることはありますか。
 やはり個人的なものにお金を集めることはやめようとは思っていました。学校へ行くために学費を援助して欲しいとかではなく、なにか「新しい価値」を生み出す場にしたいとは、考えています。お金を払ってくれた人にも価値のあるリターンがあるような、そうした場にしたかったんですね。

 現在でも、プロジェクトの掲載については、フィルタリングを行っています。人力ですが、社内でも、かなりのリソースを割いている部分です。もちろん、プロジェクトの投稿はどんなものでも歓迎ですが、健全な場作りというのは意識的にやっていますね。

※後編は11月14日(水)更新予定です。

TEXT BY KEI AMANO

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